昔の話、10年ほど前の話を思い出した
家の周りにネコがうろついている
毛の短い白い小柄なネコだ
一週間程遊びに来てた母が那覇に帰った日に
白いネコが家から出てきた
大きなビニール袋を抱えて出てきた
母が3時のフェリーに乗るために
戸締りをせず慌てて出て行ったのだろう
沖縄の家庭菓子のサーターアンダギーが6個も入ってる
袋を引きずって出てきた
私の住む家は借家である
それも本建築の建物ではない
大家さんには悪いがバラック小屋みたいな物だ
その軒先を延ばし黒いネットを張ってある
初めて私の家を訪ねて来る人は入り口を探せない
家の回りをネットで囲んでいるのだ
車の中で家から出てくる白いネコに私が先に気づいた
黒いネットの中を右から左の出口に向かっている
出口まで3m
車からは4m
私がネコに気づかずに家に向かえばネコはパニックになるだろう
出口を左に行けば犬がいる
右に私がいる
正面は2mのネットが張られてるのである
彼女が動転し家に戻れば
行き場のないネットの中を上へ下への大騒ぎとなる
ネコがメスであることは後でわかったことである
前に経験がある
引越し好きな私は年に一回は引越しをしていた
前の家のときはビックリしたネコに小便を掛けられた
不意を喰らい動転した姿を見たくはなかった
それと一生懸命運んでるのを邪魔させないものを感じたからだ
ネコが出口までたどり着いた時
私も車から下りた
ネコがビックリした目で私を見た
大きな袋を置いて逃げるのかと思った
ネコは袋を咥えなおしゆっくりとネットの先へ進んだ
その先は1.5m程の草が生い茂るネピア草のジャングルだ
そのはずれに穴が開いている
トトロの穴のように
草に囲まれたトンネルを目指し強い意志を持って
小柄な女の子が30k近いダイビング機材を引きずるように進んで行った
邪魔はしたくなかった
年老いた母が孫にあげるといって作った菓子だった
フェリーの時間に慌てて忘れていったみたいだ
母さん、あの菓子はどこに行ったのでしょう
森村誠一のフレーズをパクリ一人で笑いながら
ネコの汚した台所を片付けた
母に知れたら半日はガミガミ言われるのは間違いない
夕方、仕事を終え車を家の前につけた
空き地の反対側を白いネコが歩いてくる
なんと、子ネコを三匹も連れて
ヨチヨチと
若い白いネコは母さんだった
ナゾが解けた気がした
夕日も終わり薄暗くなりかけた頃
犬の餌をやり
空き地の隅のベンチにビール片手に腰掛けると
ネコ穴から白いネコが顔を出した
話し相手にちょうどいいと思い
持っていたドッグフードを一握り
ネコ穴とベンチと三角形になるように置いた
白いネコは一口二口食べると
三角形の真ん中に凛として正座して座った
堂々と私と対峙して正装してるかのように
子ネコが一匹出てきてドックフードを食べた
もう一匹は母親の乳を吸ってる
もう一匹はネコ穴の入り口で様子を見ている
ネコの子はそれぞれ性格が違う
どのネコの兄弟もそうだ
母ネコは正座して私を見ている
ビールを飲み終えた頃
白いネコが目の前を通り過ぎていく
子ネコたちはもういなかった
このネコ穴はどこまで続いてるのか
数日後、空き地の向かいのペンションの庭で
カツオの刺身を食べながら仲間とビールを飲んでいた
ここの若い管理人はネコを見るとすぐ石を投げる
ネコが嫌いだという
なつかれるのが嫌だと
情に弱いのだろう
若い管理人の彼女がネコ好きで
その隣のたこ焼き屋オヤジもネコ好きだった
若い管理人が先ほどから落ち着きがない
振り返ると白いネコが子ネコ三匹を連れて
路をわたって来る
先に若い管理人が気づていた
右手に石を持って
投げられた石は外れたがネコはひるんだ
その行為を二人がカワイソウ、ナンテコトヲと非難した
若い管理人は機嫌が悪くなった
白いネコは距離を置いて座って私たちを見ているが
三匹の子ネコは近くまで来て楽しそうに飛び跳ねている
家にお客が来たときの子供のようにはしゃいでいる
誰が見てもかわいく見えた
若い管理人の立場がないので
カツオの切り身を持って白い猫を空き地の隅に誘導し切り身をあげた
三匹の子ネコを一緒に見たのはこれが最後だった
翌日、近所のお姉さんに白いネコと三匹の子ネコを最近見なくなったと
私の所に着てないと聞かれた
母ネコは子ネコを連れてよく引越しをする
引越しの途中に私の家に寄ったのだ
昨夜遅く、煙草を買いに車を出した
空き地の向こうの道路を白いネコが子ネコを連れてた
一匹だった
引越しだったのだろうか
やっと梅雨らしく昨夜から雨が降ってる
昼過ぎに車に乗って空き地に横を過ぎようとした時に
ずぶ濡れの白いネコと一匹の子ネコが道路を横断した
車を止め振り返ってネコを見た
ペンションに架かる橋の脇に白いネコがうずくまっている
そこにカラスが飛んできた
橋の上からネコを見ている
1mの近くで
子ネコを狙っているのだ
さらに近づき4.50cmまで寄ってきた
これは危ないと思い車を降りてしまった
カラスは飛んでいった
今日、宵の口から大雨が降るそうだ
白いネコは若いネコだ
初めての出産子育てだろう
ここ2年、雨は少なかった彼女自身大雨は経験がないだろう
三匹いた子ネコも今は一匹しかいない
残った子猫も今夜を越せるだろうか
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