2015年8月28日金曜日

カラスの子

10年前に4・5年前の話をしている。


 4,5年前にカラスの子を貰った

毛をむしりとられたチキンのような肌
どす黒く血管が見える

三匹いた
手乗りカラスにするのだそうだ
三匹は無理なので置いていった

まだ目は開いてない
見た目が悪い
動物の子供はたいていカワイイものだが、こいつは醜い
大きな口、大きな目玉の脇に小さい頭
脇をしぼめた腕
羽が生えてないからどう見ても腕だ
栄養失調の子のような腹

誰か貰ってくれないかと、新聞紙で巣を作り預かった
誰もがが気持ち悪がって触ろうともしない
ピィーピィと声を掛けてやった
それに反応して口か顔かわからないくらい大きく口を開けて泣き始めた
お腹がすいたのだろう

まだ、ちゃんと立てない
両手を広げて天に向かって大きく口を開け
口、のど、胃袋が一直線のポーズ


人の離乳食を買って来た
割り箸を削って耳掻き状にして離乳食をあげた
彼は完全に受身である
天に向かって大きく口を開けるだけである
自分で食べることができない
食べるのではなく飲み込むのだ
タイミングよく口ではなくのどの奥をめがけて
餌を放り込むのだ
これが難しい、彼も私もイライラしながらの餌やりだ
上手くいくと、ゴックンとのどから落ちていく

一日結構な回数の餌槍となった
2、3日するとカラスがカラスの子に気づき近くに来るようになった
気になるようでちょくちょく覗きに来る
外の日光の当たらない場所に置いたりしているので
くわえて持って行くこともできるはずである
人の匂いがついてるからなのか、この子の親ではないからなのか
興味本位で着ているのかは解らない

カラスの子は元気だ
ピィーピィというとピィーピィと反応し口を開ける
条件反射である
元気に育ってるように見えた


5,6日と経つうちに食欲が落ちてきた
飼い始めてから夜はなるべく手のひらで体温が下がらないように暖めていた
ちょっと冷たい感じである
体温が下がってきてるのは間違いない
ピィーピィと声を掛けるとピィーピィーとだるそうに口を開けるが
上手く食べれない

7日目の夕方から反応しない回数が増えてきた
手のひらに抱いてそうこうしているうちに飛んだ

わかった
飛ぶのを感じた

手のひらを開いた、冷たかった
ぐったりと冷たい
外でカラスが泣いた、何匹も泣いた
時計を見ると10時だった

カラスの子を手のひらに抱いて
車をビーチに走らせた
砂浜の隅に埋めた、上にサンゴの石を積んだ
近くでカラスが見ているのだろうか

翌日、近所の人たちが昨夜10時頃カラスがうるさかったと話をしてた
「あ、 そうですか」と答えた

あのカラスの子は今もビーチに寝ている 


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